弁護士法人ハレ

【離婚】医師の夫の医療法人は財産分与の対象となるか

今回は夫が医師である場合に特有な、医療法人の財産は財産分与請求の対象となるか、という問題について解説します。

 

事例としては以下のようなものを前提にします。

 

【事例】

夫(医師、開業)と妻(医療事務)は婚姻しました。

勤務医時代に結婚し、しばらくたったあと、二人で診療所を開業し、法人化(持分のある医療法人社団)しました。出資持分は夫が100%を出資しています。

 

診療所の開設以来、妻が事務長として非常勤で従事し、その他の常勤の事務スタッフが2,3名はいました。

法人の保有財産は合計8000万円。

 

やがて離婚協議が始まりました。

 

【問題】

法人の財産が分与対象か。

医療法人の出資持分は簡単に換金できない(医療法人法の仕組みが特殊であるから)が、それでも持分は分与対象か。

妻の寄与割合はいくらか。

 

【解説】

まず法人の財産に関しては別の法人格を持っていることから、原則として分与対象とはなりません。しかし、法人の持分について(株式会社なら株式、持分会社なら持分)は個人の持ち物です。

したがって分与対象となりうるものです。

 

しかし、医療法人法上、余剰金の配当が禁止されているため純資産が大きくなりがちであり、その他社員との関係や、払戻請求をするわけにもいかないため、換金は容易ではありません。

 

そこで解決方法としては、純資産価額方式等で持分の評価を行い(株式の評価の記事を参考下さい)、評価をしつつ、どこかで折り合いをつけるということが現実的でしょう。

 

裁判例としては持分評価の6割とした事例があります。

 

一方で、寄与割合に関しては、非常勤であるということを考慮して、5割ではなく、3割や4割程度とするということが考えられます。なお、裁判例では、妻が非常勤とはいえ経理を担当していたことが認定され、4割となりました。

 

そうだとすると寄与割合を3割とした場合、8000万円×0.6×0.31440万円が分与対象となると予想されます。

 

ご自身のケースにあてはまるかどうか、異なるとすればどの点でどう異なるか、事例判断ですので、離婚に精通した弁護士に相談されることを勧めます。また、このようなケースでは専門的判断が必要とされるため、ご自身で進めるということは辞めておいた方が良いことが多いでしょう。ご自身で進める前に、一度ご相談をされることをお勧め致します。