今回は、【財産分与で、配偶者が経営している法人の株式の評価方法が問題となったケース】について解説します。
具体的には、以下のようなケースが想定されます。
結婚して15年目の夫婦が離婚協議をしています。
夫Aは、婚姻生活中に築いた財産を使用して、5年前に株式会社Bを設立しました。株式会社Bの株式は、すべて夫A名義になっています。
株式会社Bは、借り入れが多く、会社が保有している預貯金等の資産よりも、借り入れの金額の方が多い状態です。
ただ、借り入れによる投資の効果で収益は上がり始めている状況です。
今回のケースでは、結婚生活中に、結婚生活中の財産を利用して会社が設立されていますので、会社の株式についても財産分与の対象になります。
そこで、会社の株式をいくらと評価するのかということは問題になります。
会社の株式を評価するための方法は、いくつかあります。
離婚の財産分与のときに採用される方法としては、大きく、「純資産方式」と「収益還元方式」という二つの方法があります。原則的には、裁判所の判断では、純資産方式が採用されることが多いです。
純資産方式というのは、仮にその会社を解散させた場合に株主に1株当たりの純資産額がいくらになるのかを計算する方法です。大まかに言うと、会社の資産から負債を引いて計算します。
収益還元方式というのは、会社の平均収益額から企業価値を評価して計算する方法です。
ふたつの方法は、会社の収益性を加味するのかどうかという点で異なり、場合によっては、その差が非常に大きくなることもあります。会社の収益性を加味する収益還元方式の方が、株式の評価が高くなることが多いです。
今回のケースでは、夫Aは、純資産方式による評価で株価は0と主張し、妻は収益還元方式による評価額で主張して、その差が数千万円になることも考えられます。
当事者間で合意ができず、最終的に裁判所が評価方法を決めるときには、借り入れの使途(どのような投資がされているのか)や収益の安定性等によって判断が分かれる可能性があります。
このような問題が生じる可能性がある場合には、結果に大きな差がでることもありますので、専門家である弁護士に相談することをお勧めします。